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Vol. 14
(2005.07.10.)

 

毎日新聞の日曜版連載小説がおもしろい。ショートストーリーの大御所、阿刀田高さんの『おとこ坂 おんな坂』だ。"おとこ坂”とは、高台にある寺社などに通じる坂が2つある場合の険しい方の坂のことで、逆に“おんな坂”とは、緩やかな坂のこと。現在、第四話の(2)では、信用できない夫の行動に「得体の知れない気配」を感じる妻・梢子の不安な心境を、歯切れの良い言葉遣いで描き上げている。男女の妙を様々な角度から語る。(宮澤千穂)

毎日新聞・日曜版 日曜くらぶ 1面

 

Vol. 13
(2005.03.13)

 

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超売れっ子漫画家である西原理恵子さんの独特のタッチの漫画を挿絵に、西原さんの元夫、カモちゃんこと、鴨志田穣さんがアジアを旅したときの度肝を抜くエピソードの数々を書き綴る。執筆活動を始めた当初のカモさんの文章は、子供の作文みたいな味わいがあったが、今はすっかりプロの書き手だ。内容はどこまでホンマかいな?と思わせるような危なっかしい話も多いが、疲れた頭をほぐすには持ってこいの娯楽本。

「アジアパー伝」 西原理恵子、鴨志田穣 作
講談社・刊/定価・1,600円

 

Vol. 12
(2005.01.01)

 今回から、リスト表示の紹介文に変更します!

「今、もっとも注目されている作家」と称される絲山秋子(いとやまあきこ)さん。2001年まで企業に勤めていた彼女だが、現在は専従作家として、『小説現代』などでもレギュラーで軽快なエッセイを綴っている。下に紹介する3冊はどれも読みやすく、ストーリーもしっかりしていておもしろい。今流行りの純愛小説の類だが、お涙頂戴もののような重さは一切なく、スッパリとした文体が心地よく心に響く。

「イッツ・オンリー・トーク」 〜文学会新人賞受賞作〜
文藝春秋・刊/定価・1,429円

「袋小路の男」 〜川端康成文学賞受賞作〜
講談社・刊/定価・1,300円

「海の仙人」 
新潮社・刊/定価・1,300円

 

Vol. 11
(2004.02.23)

 「庭仕事の愉しみ」

ヘルマン・ヘッセ・著/岡田朝雄・訳/草思社・刊/定価・1,900円

ノーベル文学賞作家、ヘルマン・ヘッセは植物や自然をこよなく愛し、美しい草花の芽生えから静かに死に枯れていく「循環」を見つめ続けた。夏に咲き乱れた花たちは、秋が来て冬になれば朽ち果て、根こそぎ消滅する。すべての植物は土から生まれ、必ず土に帰ってゆく。その死によってもたらされる栄養を糧に、翌年の花たちは開花する。

こうした草花の営みは人間のそれに相通ずる。だが、循環のサイクルはあまりにも短く、はかない。それゆえにヘッセは、この短く単純な循環を連綿と繰り返す草花を切ないほどに愛し、慈しんだ。ヘッセにとっての庭仕事は「解放のひととき」であり、「思索と創造を生むひととき」でもあった。多忙な執筆活動の合間を縫い、自分の庭をはかなく美しい花たちで演出する創造を愉しんだのだ。

本書は、「庭」をテーマにしてヘッセ研究の第一人者により編集されたヘッセの詩文集であり、ヘッセ自身が描いた色彩豊富な水彩画や肖像写真が差し込まれた美しい本である。自然を破壊する人間の傲慢さに警鐘を鳴らし続けたヘッセの自然への賛美と敬意がぎっしりと詰められている本書は、読んで良し、見て良しの一冊だ。

(宮澤千穂)

Vol. 10以前は、只今工事中です。