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「庭仕事の愉しみ」
ヘルマン・ヘッセ・著/岡田朝雄・訳/草思社・刊/定価・1,900円
ノーベル文学賞作家、ヘルマン・ヘッセは植物や自然をこよなく愛し、美しい草花の芽生えから静かに死に枯れていく「循環」を見つめ続けた。夏に咲き乱れた花たちは、秋が来て冬になれば朽ち果て、根こそぎ消滅する。すべての植物は土から生まれ、必ず土に帰ってゆく。その死によってもたらされる栄養を糧に、翌年の花たちは開花する。
こうした草花の営みは人間のそれに相通ずる。だが、循環のサイクルはあまりにも短く、はかない。それゆえにヘッセは、この短く単純な循環を連綿と繰り返す草花を切ないほどに愛し、慈しんだ。ヘッセにとっての庭仕事は「解放のひととき」であり、「思索と創造を生むひととき」でもあった。多忙な執筆活動の合間を縫い、自分の庭をはかなく美しい花たちで演出する創造を愉しんだのだ。
本書は、「庭」をテーマにしてヘッセ研究の第一人者により編集されたヘッセの詩文集であり、ヘッセ自身が描いた色彩豊富な水彩画や肖像写真が差し込まれた美しい本である。自然を破壊する人間の傲慢さに警鐘を鳴らし続けたヘッセの自然への賛美と敬意がぎっしりと詰められている本書は、読んで良し、見て良しの一冊だ。
(宮澤千穂)
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